To read this article about the Pacific Music Festival in Sapporo in English, click here.
パシフィック・ミュージック・フェスティバル(PMF)は、1990年に、20世紀を代表する指揮者、作曲家のレナード・バーンスタインがロンドン交響楽団とともに札幌で創設した国際教育音楽祭です。四半世紀以上前に創設されて以来、毎年7月の1カ月間、世界の主要なオーケストラの首席奏者をはじめとする教授陣から直接指導を受け、日本文化を体験し、国際的な場で学ぶことのできるPMFに参加したアカデミー生(PMF修了生)は、2018年までに延べ3,500名を超えます。
PMFのアーティスティック・マネジャーであるニック・エイカーズ氏より、更に詳しくお聞きすることが出来ました:
質問:バーンスタインのパシフィック・ミュージック・フェスティバルに対するビジョンについてお聞かせ下さい。今、PMFでは彼の遺志をそのままに活動されているのか、新しい時代に合わせる形で実現しようとされているのか、どちらでしょうか。
回答:バーンスタインは世界平和への貢献としての音楽の力を信じていました。その考えは当時も現代と同様に斬新なものでしたが、実際に音楽は人の持つ文化や背景など、様々な壁を越えて私たちを繋げます。もうひとつの要素として、彼の国際的な教育に対する熱意が挙げられます。その観点から見て、アメリカのタングルウッド音楽祭、ヨーロッパのシュレスヴィヒ=ホルシュタイン音楽祭にゆかりがあった彼としては、アジアの音楽祭を創設することが次のステップでした。彼は第1回目のPMFで、残された人生を若手音楽家の教育に捧げることを誓いました。私たちは、彼のこの二つのビジョンを今の時代に適応させることにより、その遺志を確実に受け継いでいけるのです。
質問:参加を目指す人たちに向けて、PMFの概要を教えて下さい。どんなところがPMFの魅力でしょうか。
回答:一日中毎日、音楽に触れていられることや、世界一流の指揮者、世界的メジャー・オーケストラの首席奏者、各分野の専門家たちに学べること、そして40回もあるコンサート。多くの献身と技術を要求するものです。こうした環境は音楽家自身の限界を超えさせ、意識すら改革します。得るものはとても大きく、PMFで出来た仲間は生涯における仲間となることもしばしばです。また、札幌は食も素晴らしく、人が親切で協力的であり、夏の気候は世界随一の過ごしやすさです。
質問:多くの音楽祭が若手音楽家を招聘していますが、参加者に対して、PMFは群を抜いて惜しみない支援をしていると感じます。日本への往復航空券代や、宿泊、教育費を負担していますね。なぜこのようなことが実現できるのでしょうか。
回答:すべての若手音楽家が可能な限り平等な機会を得られるようにする為には、経済的な負担を取り除くことがひとつの条件でした。経済的な問題が解消されなければ出会えなかった素晴らしい音楽家たちもいますので、こうした問題が無いことはPMFにとって大きな強みとなっています。PMFの開催を支えているのは、PMFの理念に賛同して下さる個人の皆様、企業・団体の皆様、そしてその文化に誇りを持っている札幌市です。
質問:一年に参加者は何名で、年齢層はどうなっていますか?また、合格者の倍率はいくつですか?
回答:オーケストラは90-100人から構成され、年齢は18-29歳(平均約24歳)です。2018年には98人の構成に対して1,165人の応募があり、1席あたりの倍率は12人くらいが平均ですが、楽器によっては1席30人を超える場合もあります。
質問:参加者の多くは日本に行ったり、海外に渡ったりするのは初めてなのでしょうか。
回答:オーケストラの75-80%は日本の外から来ます。(2018年は65カ国・地域からオーディションに応募があり、そのうち22カ国・地域の音楽家が選出されました。)そのため、初来日や海外滞在が初めてだという人も多いです。
質問:参加者にはどうやって日本文化を紹介していますか。
回答:日本文化を紹介するためにはかなりの労力をかけています。たとえば、着物の着付けや、茶道、琴などを紹介するボランティア団体があります。音楽祭は全てが英語で行われるため、日本語力は不要で多くの参加者は日本語を話せません。それでも彼らは日本文化を理解しようとしますし、コミュニティに手を伸ばし、繋がろうと努力します。そうした出会いの中での互いへの尊敬の表し方は、見ていてとても励まされます!
また、3名のPMF参加者からコメントをもらいました:
質問:音楽祭で何が一番印象深かったですか?
回答:
ダリーオ・ポルティーヨ・ガヴァーレさん(フルート、PMF 2016/2017参加者、以下ダリーオ):日本と、日本文化、そして世界中の人々が話す共通言語―音楽!PMFで得た音楽的経験は素晴らしく、沢山のことが学べました。
ジャネット・リューさん(ヴァイオリン、PMF 2013/2016/2017参加者、以下ジャネット):
PMFで一番覚えているのは、全ての演奏会での観客の鳴り止まない拍手ととてつもない熱意です。音楽が影響力を持つもので意義深いものだからこそ、私たちは音楽活動をしているのだということを思い出させてくれました。
質問:日本滞在中、一番思い出深かったことは何でしょうか。
ダリーオ:日本という国と日本人が大好きになりました。僕はアジアに行くのが初めてで、地球の反対側でのものごとのあり方にも驚きましたが、日本語が話せなくても一人の人間として、心がこんなに近いことにも感銘を受けました。
ジャネット:新しいことに挑戦することが恐くないとは言い切れませんが、日本に行けるドキドキ感は忘れることが出来ません。滞在中はいつも自分が小さな子どものように感じられて、全てに対して畏敬の念を抱いていました。
質問:どのように一日一日を過ごしていましたか。
ダリーオ:かなり疲れますが、夢のような時間でした。期間中一日しか休みがありませんでしたが、いつもやる気に満ち溢れながら次のリハーサルやコンサートに出向き、一日の終わりには他のメンバーと楽しく過ごしていました。
サミール・アプテさん(チェロ、PMF 2017参加者、以下サミール):通常リハーサルがある日の始まりはホテルでの朝食、その後歩いて会場のKitaraまで行きます。朝のリハーサルが終わったら、ホール内外でお昼休憩があり、午後からはまた別のリハーサルが始まります。その後室内楽のリハーサルやコーチング、夕食や仲間たちとの夜を過ごしていました。
質問:日本食はどうでしたか。
ダリーオ:今まで食べてきた何よりも美味しいです!食事のために日本にまた行きたいくらいです。
サミール:食事は素晴らしいものでした。多様な感性を持つ日本食の美学は唯一無二のものであり、日本に居る間にたくさん味わえたことを嬉しく思います。
質問:PMFに参加したことで得た、最も重要なものは何ですか。
ジャネット:札幌で偉大な才能たちに囲まれて一ヶ月を過ごしたことは、私に人としても音楽家としても、消せない痕跡を残しました。大きなグループの中の小さな1部分であっても、それを超越したものがあるため、オーケストラで演奏することは大好きです。
サミール:PMFのような音楽祭で得られる最も重要なことは、世界中の音楽家たちと繋がることができることだと感じています。皆、驚くほど文化の違いに寛容で、異国のことを理解するために努力します。また、世界トップクラスのオーケストラ奏者から学べる機会があることも最も重要な要素です。
質問:PMFに応募する若手音楽家にアドバイスをお願いします。
ダリーオ:本当に自分のベストなものを提出するためには、レコーディングを何回もする忍耐力が必要です。席は非常に限られているのに、優秀な応募者が多く、実はPMFも審査に苦労しているので、選ばれなくても何度も挑戦することです。
ジャネット:広い視野を持った方が良いと思います。世界中から音楽家が集まる素晴らしい拠点なので、普段なじみの無いことも期待されることがあります。また、とてもペースの速い音楽祭なので、過酷なリハーサル・スケジュールには筋力が試されますから、日々しっかりと休息し、体の健康には気をつけることです。
サミール:豊かな音楽を作り続けて下さい。PMFでは完璧に演奏することよりも、世界に向けての音楽大使になることが目的です。
This article was sponsored by the Pacific Music Festival, who kindly provided the Japanese translation.

